理念浸透に関する違和感

理念に関わる組織運営についてのご相談が増えています。

ただ、ご相談いただいた内容に違和感を覚えることが多いのです。

 

「浸透させる」とは、何かを染み込ませるとか、広く行き渡らせることです。
理念を浸透させるとは、理念を社員に染み込ませるということです。

 

しかし、社員の意思に関係なく、何かを浸透させようと取り組むことは、
組織運営として、本当に正しいことなのでしょうか?

 


理念に対して、まずその重要性を認知し、理解、共感、納得というプロセスを
経た後、社員は主体的に行動へと反映していきます。

 

重要度の認知は、経営層をはじめとする会社が大切にしていると言い続け、
常に行動や態度で示すことや、評価制度などの仕組みに反映すれば、
その本気度が社員に伝わります。


 

しかし、社員に理念を理解してもらうには、一方的な説明や解説書を
配布するだけでは、不十分です。


一人ひとりの社員が理念を理解しているか、話し合いを通じて、
確認しなければなりません。

 

そのためには、理念を深く理解している人間が必要で、その役割を
マネジャーに求めるなら、彼らが理念を理解しているだけでなく、
少なくとも共感、納得している必要があります。


 

理念という抽象的で多様な解釈が可能であるような概念について、社員に
共感や納得をしてもらうことは、一朝一夕には実現できません。

 


例えば、対話を通じて、共感や納得を少しずつ深めていくことが求められます。


理念について考えることは、哲学や道徳、宗教、倫理について考えることに類似しています。


誰もがすぐに同じ答えには至り難く、また明確な答えも得られないものです。


さらに言えば、すぐには理解できないもの。

深く考えれば考えるほど、新たな解釈や意義に気づくものではないでしょうか。


 

そのように考えると、「社員に理念を浸透させる」という表現は、
意図を持った他者からの一方的な行為を想起させ、やや不自然に感じます。

 

理念浸透に関する取り組みを行う組織は珍しくありませんが、その多くは
短期的な結果を求めがちです。


冒頭に書いた相談者たちも、短期的に結果が現れることが前提で
相談しに来られました。


 

とにかく理念を浸透させようと結果を焦る組織では、マネジャーが理念に
基づいた行動を疎かにするなどのように、内部に歪が生じることや、
浸透に向けた活動を途中で諦めてしまいます。

 

その結果、「会社は本当に理念を大切にしているのか?」、

「理念にある言葉は、本当に実現したい姿なのか?」など、社員が懐疑的になるのです。


 

理念を真に重視している組織は、長期的な視点で活動していますし、
重視している以上、活動を止めることはあり得ないのです。

 

その結果として、社員に理念が浸透するのです。