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新卒採用の規制緩和

一部の経済団体や業界団体による新卒採用の開始時期を遅らせる提言がニュースで

取り上げられることが多くなりました。
各団体の思惑があって、開始時期や指針にも違いがあります。


それらに対して、どの団体も足並みを揃えていきたいとコメントしていますが、

“みんなと同じなら問題なし”という固定観念が定着していると思います。
足並みが揃わない採用活動のデメリットについては、よく議論されますが、

足並みを揃えない採用活動のメリットは、ないのでしょうか?


早期採用による弊害など、懸念される問題を一旦全て脇において、

各社がいつでも誰にでも、自由に採用活動できるようになったときの企業・学生のメリットを考えてみます。


1.ピーク時期の緩和により、企業・学生の接触機会が増加
倫理憲章の弊害は、遵守した企業(大手)の選考が4月前半に集中せざるを得ず、

優秀な学生と出会う機会が減少していることです。
また、この時期は、多くの就活生が1日3社以上の選考を受けて、疲弊しています。
こうした状況は、誰もが知っているわけで、遵守企業の中には、4月以前に学生と接触し、

表向きはセミナーと称した選考を実施しています。
また、選考日時を増加させることで、この問題に対応しています。
予想通り、倫理憲章は本来の趣旨として機能しておらず、企業にとっては明らかに

採用活動におけるロスと言えます。
自由に採用活動ができれば、倫理憲章が存在しない頃にはなかった、こうしたロスは減らすことができます。
また、同時期に企業の説明会や選考が集中することが是正されれば、就活生も自分の都合に合わせて、

活動がしやすくなります。

2.アプローチできる学生(既卒者)が増える。
年間を通して、採用活動をすることが当たり前になれば、大学1年生や既卒者(3年間は新卒扱いの流れは

ありますが)にアプローチする企業があっても構わないでしょう。
経営計画は、中長期で立案するわけですから、1年(~1年半)サイクルの採用活動がそもそもおかしいのです。
もちろん、中期経営計画に変更があるように、採用計画にも変更があっていいでしょう。
ただ、規制がなくなった場合、中長期の採用計画を立てれば、就活生だけでなく、就活を数年後に控えた

学生に対しても、アプローチを考えるようになります。
大学1年生より3年生の方が必ず優秀であるとは言い切れませんし、長期的に採用広報を実施する企業も

出てきていいと思います。
仮に、現在の多くの規制が撤廃されて、学生に自由にアプローチできるようになったとしても、

1年生にアプローチする企業は、そう多くないでしょう。


この1,2のメリットは、現状の規制を緩和して、その弊害については、一旦考慮しない場合の話です。
ですから、現在の新卒採用方法に関する問題の解決策にはなりませんが、フレームを外して考えてみることも

大切ではないでしょうか?


規制が緩和されれば、そこには変化が生まれます。


採用活動にも多様性が生まれます。そうなれば、学生の就職活動にも多様性が生まれます。
実際、就職サイトが主流の現在の新卒採用においても、TwitterやFacebookを併用した

採用活動を行う企業が出てきました。
これも、僅かではありますが、変化の兆しです。これを受けて、TwitterやFacebookを就活に利用する

学生が出てきました。
こうした変化の兆しを大きくするためには、時間にもメスを入れることです。

そうすれば、1年単位で採用を捉える主流に変化が生まれます。

産業が成長するためには、規制緩和が必要です。
同じように、採用活動の全体的なレベルが向上するためには、現在の規制を緩和する必要を感じています。
もちろん、規制緩和だけではなく、それによる弊害を議論し、対策を講じることまでがセットです。
ただ、現在の新卒採用方法に関する議論では、問題を洗い出し、抜本的な改革の必要性を唱えるものの、

実際に改革を行うと、弊害が大きいので、ミニマムカスタマイズをしているに過ぎません。
国内で、新卒採用のやり方に関する議論が遅々として進展しない間に、海外で採用活動を行う企業が

増加しています。
これからもっと増えてくるでしょう。


グローバル採用が当たり前になったとき、日本の現行の新卒採用活動がいかに特異であるかが、

改めて認識されるようになります。
競争力の高い組織を目指し、多様性のある人材を本気で集めたいと思う企業は、

現行の新卒採用活動の限界を感じているでしょう。
また、新卒採用活動だけではなく、新人研修と銘打って、全新入社員に同じ教育を提供することが、

本当にベストな育成施策なのか。
ゼロベースで、検討してみる余地があると思います。