· 

理念を理解するとは

理念浸透について、何をもって浸透したかを判断することは、定量的にはとても難しいものです。


従業員アンケートなどによってある程度の推測は可能ですが、結局のところ自己申告の域を出ません。


例えば、「あなたは理念を理解していますか?」という設問に対して、YESと答える従業員の中にも様々なタイプ(状態)が考えられます。今回は、主に3つのタイプについて書きます。

 


1.理念として書かれている文章を理解している人

 

例えば、お客様第一が理念なら、「お客様を大切にすることが一番であると、会社が考えている」ことを理解している人のことです。このような状態の人は、理念に対して賛同もしないが反対もしません。

 

自分の仕事との関連性について考えることはあまりなく、実践しようとも考えていない状態です。

これでは、“会社が求めるレベルの人”とは言えないのですが、そもそも、理念を理解するとはどういうことかということを共通認識として持っていない企業であれば、こうしたことが当然起こります。

 

 


2.理解しているが、共感していない人

 

・ 会社が言っていることは分かるが、どうもしっくりこない。

・ 自分は頑張っているのに、何が問題なのか分からない。

・ そもそも、なぜ今さら理念についてうるさく言うのだろうか。

・ 理念を理解することとしないことで、仕事に大した影響が出るとは思えない。

・ 理念なんて言えなくたって、私はいい仕事をしている。

 

企業理念やそれに基づくミッション、価値観などと、自分の職務との関連性や理念浸透の意義について納得できていない状態の人を指します。

 

理念浸透への取組み意図や想い、熱意などを従業員が汲み取ることができなければ、共感を得ることは難しいでしょう。また、これまでに築き上げた組織文化やそれを支えている価値観に基づいて、企業理念が明文化されていることを理解できなければ、従業員が自らの職務との関連性を考えるには至らないでしょう。

こうしたことを日常的に考える機会は、非常に少ないものです。

こういう場合でも、アンケートではYESと答えられます。

 

 


3.理念に基づいて日々の行動を実践している。

 

個人の視点、部署の視点、会社の視点など多様な視点で仕事に取り組むことができ、仕事上の判断や行動は理念に基づいている。それがその人にとって自然な状態として取り組まれている。

このような状態の人は、まさに理念の体現者であります。

 

 

 


このように、一口に理念を理解しているといっても、これだけの幅があるということを忘れてはいけません。

 

従って、理念浸透への取り組みを考える際は、自社がどのような状態か。

さらに、1~3のような状態にある従業員は、いま何を思っているのか。
こうしたことをよく調べた上で施策を検討するほうが良いでしょう。


例えば、アンケート調査は簡便で効率的でありますが、従業員の生の声といった定性的な情報を拾うことが

難しい手段であります。
一方、インタビュー調査は定性的な情報を得られますが、非効率で、組織規模が大きい場合は、全員の声を集約することは難しくなります。


それでも、従業員の生の声を拾おうとする姿勢は、理念浸透における取り組みにおいて必要なプロセスと考えます。

 

「人は何を以って行動するか」について、考えるならば、指示命令や理屈だけでは決して上手くいかないことを誰もが知っているからです。理念浸透に本気で取り組むのであれば、会社は、従業員と膝を突き合わせて対話することからスタートすべきでしょう。


それは、会社が従業員に対してメッセージを発信するだけではなく、相手(従業員)が会社に対して何を思い、何を感じているかを知ろうとすること。


理念浸透を進めるのであれば、まずはリーダーから理念を体現する姿勢を見せなければなりません。