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人事に求められる2つの役割

人事スタッフとして求められる役割とは何でしょうか?

 

採用、人材育成、労務管理、給与計算、人事制度など、担当する職務や領域において、求められる役割は異なります。

人事のどの分野においても、必要な実務を行うことは当然として、その上でどのような役割が必要か考えてみました。

 

これまで多くの人事担当者と接してきた中で考えてきたことなのですが、大別すると、2つの役割になります。

 

 

 

1.仕組みを考える

 

組織の成果の最大化を目指し、それを継続していくために人事部が存在しているとすれば、考えなければならないことがあります。

 

・どのような人材を採用し、どこに配置するか?

・どのような組織体制を構築するか?

・最適な人事制度は何か?

・どのような文化をつくり、風土として根付かせるか?

 

 

例を挙げればきりがありませんが、従業員それぞれの強みを踏まえた上で、コンセプトや枠組みを考え、実践していくことが求められます。そのためには、組織が目指す方向について経営層との認識が一致しており、いかなる仕組みを構築するにしても、一枚岩で取り組む必要があります。

 

他社事例や人事に関する知識は、あるに越したことはありませんが、新たな仕組みを描く力は、知識だけでは難しいのではないでしょうか?組織の現状や問題点を端的に把握して、整理する力や、前例に囚われない新しいアイデアを出すことが求められます。

そのためには、日頃から考える習慣が身についていなければなりません。

 

 

2.上手に運用していく

 

優れた人事制度が上手く機能しないケースは決して珍しくありません。

 

そもそも組織にマッチしない人事制度であったということもありますが、その多くは、運用におけるコミュニケーション不足が原因です。

 

人事制度に限らず、仕組みや施策を新たなに導入し、運用していくときには、しばしばコミュニケーション不足に陥ります。

 

 

具体的に言えば、何のためにその制度を導入するか、また、その制度を導入することで従業員と組織にとって何がどう良くなるのか。このようなことを丁寧に説明できていないことが多いのです。

 

 端的に言えば、説明責任を果たしていないということです。

 

人事の説明責任とは、従業員に説明することではありません。

従業員から理解と共感を得て、初めて説明責任を果たしたと言えます。

 

単に説明して終わりではなく、従業員の疑問や不安に耳を傾け、対話を繰り返し行うことで、真の理解や共感をようやく得られるのです。従業員とのこのようなコミュニケーションは、非常に時間のかかる仕事です。

 

「人事部 対 現場」というマスのコミュニケーションだけでは、従業員から理解や共感を得ることは容易ではありません。

 

1対1でなければならないわけではありません。しかし、それに準ずる形か、定期的に対話の機会を持って、粘り強く進めなければ、説明責任を果たせないでしょう。

 

そして、運用を続けていく中で、随時、従業員からの声を拾い、対話を続けながら、より良い仕組みへと修正していくことが必要です。

 

 

 

このように考えてきますと、仕組みを考えることと、上手く運用することのそれぞれに求められる能力は異なります。

 

これら2つの役割を同一人物が担うことができるのは、極めて稀です。

2つの役割はそれぞれ別の人事スタッフが担うほうが現実的でしょう。

 

1は、日頃から物事の本質を考えている人や、発想力が豊かな人、観察することが得意な人がお勧めです。

 熟慮できるだけでなく、柔軟な思考も求められます。

 

 一方、2は従業員一人ひとりと頻繁にコミュニケーションが取れて、親しみやすい人柄の持ち主がお勧めです。

 「あなたにはつい言ってしまう。」こんな風に従業員から言われるような方が理想的です。

 

もちろん組織の規模に応じて、従業員とコミュニケーションを取れる人事スタッフを配置しておかなければ実現できません。

 

 

2のような役割をうまく行える人材は、営業職の現場にもいます。

 

採用担当者に、営業から異動させた人材を配置するのは、よくある話ですが、初対面となる応募者ともうまくコミュニケーションを取れる可能性が高いからです。これは、まさに2のような役割を担える人材でしょう。

 

あなたの組織にいる人事スタッフは、どちらの役割を担っているでしょうか?

 

1人に両方の役割を求めていたとしたら、早く改善することをお勧めします。